耐震偽造:必死の告発、反応鈍く 空白の1年半に憤り[毎日新聞]
2005年12月1日 時事ニュースhttp://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20051201k0000m040158000c.html
「1年半前に気づいたときに、もっと注意喚起をしていれば」−−。姉歯秀次1級建築士(48)による耐震データ偽造を見抜き、告発していた構造設計事務所社長(44)は、次々と明らかになる姉歯物件の“偽造汚染”に頭を抱えた。「これ以上、『姉歯物件』の入居者を増やしてはいけない」。そんな必死の思いでの告発にも確認検査機関の動きは鈍かった。社長の証言は、マンションなどの建築確認体制における構造的な問題を改めて浮き彫りにした。コメントは次で
「鉄筋の本数が少ないだけでなく、地震に対する水平力の入力値が通常の4分の1しかなかった」。社長が姉歯建築士の設計図を最初に見たのは04年2月。東京都港区の10階建てマンションで、同年1月に「日本ERI」(東京都港区)が建築確認していた。この構造設計を姉歯建築士に下請けに出していた横浜市内のデザイン設計事務所が「姉歯氏は仕事がいいかげん」と気付き、社長に再設計を依頼したのだ。「柱やはりも細い。一目でおかしいと感じる設計図だった」。社長が問いただすと、姉歯建築士は「外注していたから間違えてしまった。すみません」と話したという。
すぐに構造設計をやり直す一方で、同年4月、姉歯物件の建築確認をしたERIの担当検査員に「姉歯建築士の構造設計はひどい。あんなことやる人など見たことない」と強い口調で注意したという。しかし、この告発に返答はなかった。29日のERIの会見によると、告発は担当者レベルにとどまり、同社が組織的に知ることはなかった。
そして今年10月初旬。取引のあった建設業者からの相談に、1年半前の出来事がよみがえった。その設計図は「おかしさの度合いを超えたもの」で、構造計算書も検査項目の一つが抜けていたり、計算に連続性がなかった。
社長は、姉歯建築士が構造計算を担当した「グランドステージ藤沢」(神奈川県藤沢市)が、10月末に完成予定であることを建築主「ヒューザー」のホームページで知った。「入居が始まる前に何とかしないと」と、イー社に告発。しかし、イー社の対応は鈍かった。
告発した社長は「(姉歯建築士が)まさかここまで大規模に耐震データを偽造していたとは。ERIが組織的に対応していれば、この1年半、新たな被害者は出なかったかもしれない。イー社も、あんな稚拙な偽造はすぐに見抜けるのに。緊迫感がなかったのか」と憤っている。【種市房子】
毎日新聞 2005年12月1日 3時00分
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